○幼女婚

獣には記憶という概念が無かった。
夏の終わりから4日過ぎた夕方、雷を受け蝉の抜け殻から
生まれた獣は、考える脳と何事も成せるであろう体躯を
持っていたが記憶や目的を持たされていなかった。
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獣は嘆いた。使命を与えられずに誕生してしまった
自分はアルセスの怒りを受けて殺されてしまうだろう。
そうなる前に何としてでも使命を見つけなくては
ならない。
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草原から街へと至った所で獣は疾走を止めた。

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獣の眼下に幼女が立っていたのだ。
120リーデもないような幼女。
修道服を纏い、幼女の2倍はあろうかという
巨大な十字架を抱えている。
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ああ、神の代行者だ。獣はついに罰せられると思った。
脅え震える獣に幼女は近づき、つるりとした顔を撫でた。
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あなたは目的を持たずに生まれたのね。
ならば私があなたの目的になってあげる。
あなたは私の夫となり、私はあなたの妻となるわ。
私を守り、敬い、愛し、誓いなさい。
それがあなたの目的。それがあなたの使命。
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先ずは…あれを食らいなさい。
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幼女の後ろに黒いオーブを纏った複数の影が
やってきた。
獣は幼女を飛び越えそれらを轢き裂いた。
超展開すぎるのと、幼女と結婚は法律的に大丈夫なのかとが
気になったが、殺されるよりはマシだったので、
獣は幼女の夫となった。